ソーラーカー講習会資料

Dream Cup 4年間の参戦を振り返って」

                          


4年間の成績と車の改良「参戦して学んだ事」
         2007年若葉会50周年の一環として、ドリームカップソーラーカーレース鈴鹿へ参戦することを決定
        モノ造りプロの実力を見せると意気込み機体作成、初めて製作したのが試作機(後に初号機と命名)

鉄のフレームのみでアッパーボディ無し、走行のデーターを取ることであったが、
        手探りでの製作のため、様々な問題が発生、試走のためトラックから降ろしただけで故障、
        またコントローラ設定が未解析のため、電圧設定がわからず最高速が40km程度と非常に遅く、
     使い物にならず
最終的には破棄、よき勉強になった機体であった。

初号機の教訓を生かし鈴鹿に出場できる弍号機を製作、この時すでに5月初旬、
         間に合わないとの声の中、連日の突貫作業にて、なんとか試走会に間に合わせ、07年鈴鹿に初参戦!!

          
         

         本戦では鈴鹿の厳しい洗礼を浴び、予選で左前輪脱落、その時のダメージが原因で
         本戦2周目で操舵不能に陥り、一時はリタイアを覚悟したが、ドライバーが不屈の執念で
         ピット帰還、40分に渡る懸命の修理でレース復帰
         その後は順調に周回を重ねるがトータルで1時間以上のロスはいかんともしがたく
         2623位の成績を残す。鈴鹿に出場前は5位入賞などと豪語していたが
         レースの頂きの高さを、そして厳しさを痛感した年であった。

         

              2008

昨年の教訓を踏まえ、今年は悔しい思いをしたくないとの全員一致で参号機の製作に踏み切る
        今年こそはと期待の中、空力を重視しかつ軽量化された機体で鈴鹿に望む

          

          何度も試走を重ね問題点をいくつも改良し、剛性を上げつつ同程度の重量に、空力はかなりの向上が見られた、
          今年は鈴鹿の表彰台に立つと意気込んで参戦、予選では謎のトラブルでモーター停止
          特別措置にて最後部からのスタートとなる。
          51番グリッドからのスタートながら快走し6周目にクラス8位にまで浮上、
          しかしまたもや無念の電装系トラブルで第2コーナーで停止、無駄に20分を費やす
          その間ドライバーがあれこれ、整備していると何故か起動、ピットに帰ってくるが
          やはり原因がわからないままである(2010年になってやっと原因が判明)
          これ以上のロスを避けるため、開始後1時間10分でドライバー交代、その後は順調に周回を重ね、
          結果2919位と奮戦したがチームのレース経験の少なさ、電気系統の知識の無さ、
          そして指揮系統の悪さが見事に露呈した形になってしまった。




          2009

WAKABAGOがまだまだ軽量化が足りない
          そして転がり抵抗も悪いこのままでは上位入賞等、夢また夢の話であるため、軽量化に取り組む


         力のかからないところには穴を開け、定格以上のケーブルを使用していたため
      配線を全て
やり変え、時間が無いために鈴鹿出場が危ぶまれたが、またもや突貫作業でレースに間に合わす
          2009年は残念ながら天候が良くなく若葉会にとっては初めての雨天走行
         もちろんノウハウも走行テクニックも無いまま本戦に望むことになる

雨天の中、慎重に周回を重ね、また第1ドライバーの奮闘のおかげで、クラス6〜7位をずっと
          キープし第2ドライバーに交代、3時間25分、とうとう3位に浮上、
      夢の表彰台をつかむように
見えたのだが、急激に電圧が下がり
      アクセルを踏むと
75Vに落ち込みコース上に停止

残念ながら4位に陥落、予算の都合上、今年はバッテリーを買い換えず参加したが
          放置したバッテリーは予想以上に劣化が進んでおり、予定していた電力が取り出せず
          無念の4位入賞となった。

  2010

毎年のことであるが今年こそはと意気込みさらなる軽量化に励むことになる

今年は新たに低速トルク重視で走行することを決定、ミツバさん協力の下、
          モーター配線巻き替えに挑戦、メンバーの奮闘で巻き替え成功

鈴鹿でも良いタイムを出し、今年こそはイケると思っていた矢先、
      予選で車が動かなくなるトラブルが発生、
車体最高顧問が原因を発見、
      ブレーキディスクを薄くしすぎたため、ブレーキを多用すると、

          熱変位でディスクがブレーキパッドに引っかかってしまう危険な問題が生じてしまう、
          止むを得ず本戦では回生ブレーキのみで走行しフットブレーキは危険回避以外では
      使用しないことに作戦を変更する

バトルを回避し、バッテリーを温存、後はひたすら周りの自滅を待つ「アイスマン」作戦が功を奏し
          2位の好成績でチェッカーを受けることが出来た、正に若葉会が夢にまで見た表彰台であった

より良い成績を目指した鈴鹿サーキットの走行について・・・

@安定したラップの重ね方
              鈴鹿サーキットの走行経験が少ない若葉会ドライバーが取った作戦は、
          ピットクルーと協力して1分毎の時間を携帯電話で連絡してもらう方法である。
          重ねるラップタイムにもよるが、「2分経過」のコールがあるとダンロップの坂頂上付近、
         3分」で、ヘアピンカーブ「4分」でスプーンを立ち上がって裏ストレートの上り坂「5分」で
          シケインコーナー手前。これで6分のペースである。経過時間をコールしてもらうと、
          ペースアップやダウンのリクエストにも応えやすくなる。
          勿論、コントロールラインを追加した時にピットクルーから、ラップタイムと使用したワット数をドライバーに伝える。

Aペースノート作成の薦め
              鈴鹿の試走会は、経験値を上げる為に必要であるのは言うまでもないが、
          同時にペースノートを作って、どのコーナーはどれ位のスピードで走行しているか書き記す。
          私の経験上コーナーの進入速度も大切ではあるが、裏ストレートのアクセルワークが最も難しく、
          1周の消費量を決定づけるポイントだと思われる。

B上り坂の走行方法
              上り坂は、フルアクセル一気に駆け上る。平地は間歇アクセルワークよりも一定の電流で走りきる。

Cブレーキは踏まない
              危険回避は別として、ブレーキは使用しない。エネルギーの無駄使いを極力避ける。

Dバックミラーの確認
              安全確保の為にもバックミラーをしっかり確認。コーナー進入前、脱出後など、後方より早い車が来ていないか必ず確認。

E指示を忠実に守る
              ドライバー一人で、戦っているのではない。チームの一員として責任を果たす事を忘れない。

エントラントの役割

ソーラーカー作りでエントラントのリーダーシップ性を問われることが
         少なからずあるエントラントとは何か?
         

エントラントの大事なことはまず、会の一番の奉仕者であるメンバーに来て
         いただくと言う気持ちを忘れず心から来てくれて、手伝ってくれてありがとうの気持ちを持つこと。
         そのためには基本的には、全ての作業に参加することが大切である、
         どうしても無理な場合は必ずその旨をメンバーに前もって伝えるようにすること。

高いモチベーションがなければ、メンバーが徐々に離れていくことになる
        当会でもメンバーの離散が問題になっている。
        そうしたメンバーへのフォロー、そして新しいメンバーを発掘することが
        大切である、そのためメンバー一人一人に担当を与え、
        責任を持って作業に、あたってもらうよう良く考えて人員配置をすること。

やはり人間、気持ちでは理解できても、やはり飽きが必ず来る
        十数年鈴鹿に参戦している方々を心から尊敬する、長い時間をソーラーカーに費やし、
         挫けそうになる気持ちを抑え、仕事、家庭、プライベートをかなり犠牲にして参加されている方も沢山居る、
         その気持ちと熱意が上位入賞に結果として出るのである
         レースで上位入賞するには会がピラミッド的なトップダウンな組織であり、且つそれぞれのメンバーが
         自分の役割を認識し、100%の働きをしないと良い成績を得ることが不可能である。

重要な課題として資金集めがある、当然、会によって調達方法は違うが
         可能な限り協賛先、スポンサー、援助者の理解を募り、少しでも多くの資金を集めることも役割のひとつである
         主な例として、ステッカーを車体に貼ることで協賛先から資金を調達することがある

その場合例外を除き協賛先企業または協賛者に直接的な利益をもたらすことは無い
         あくまでも好意で協賛金を、または賛同して頂いてるんだという気持ちを常に持たなければ協賛金獲得は不可能である。
         多くの協賛者を集めることにより、そこからの繋がりでテレビ、新聞、地域のメディア等にも取り上げてもらえ、
         それが相乗効果を生み出し、最終的には会の知名度向上、さらに資金調達の可能性が、増えることになる。

エントラントは全てを統括する最終責任者である、大きく分けると、設計、製造、試走行、そしてレースがある。
         しかしほとんどの会がメンバーに兼任を強いてしまう
         故にエントラントは全てにおいて、最低限の知識が必要である、幸いにもソーラーカー界は
         親切な方の集まりである先人達は皆様気軽に質問に答えてくれ、惜しみなくノウハウを提供してくれる。
         気兼ねせず、メールしたり、電話で問いあわせると驚くほど親身になって教えていただける。
         車体を製作時、必ず難関にぶちあたる、困った時はまず先人達の意見を参考することを勧める

     エントラントは初めに年間スケジュールを立てる
        2011年度ならば86日(土)を最終目標としたスケジュールを立てる
        若葉会の予定である、全員社会人のため主たる活動は日曜日になる

327()ソーラーカー作業場所に移転
403()機体を全て分解する
410()改良箇所の会議
417()改良箇所の会議、調達品手配
424()改良箇所の製作及び取り付け
508()車体改良
515()車体改良
522()車体改良
529()車体改良
605()試走 ドライバー選定
612()試走後改良
619()試走会前の調整
620()鈴鹿試走会(未確認)
626()試走会後改良
703()車体改良
710()車体改良
713()最終調整
724()最終調整
731()最終調整
804()車体搬入
805()車検
806()本戦
設計、部品入手、部品製作等は平日に個別で担当者が作業にあたる


       エントラントはあらゆることを手配することが大切である。手配内容が多い場合、
       担当者を任命し、その担当者とマメに連絡を取る義務を怠らないこと。
        1.  予算編成
        2. 年間スケジュールの立案
        3. 資材、工具の手配
        4. 製作、整備場所の選定
        5. 個々の部品製作担当者の任命
        6. 協賛先、協賛者へのご挨拶
        7. 使用するソーラーパネルの発電試験
        8. 使用するバッテリーの手配と放電試験
        9.  事務局への仮エントリー書類提出
       10. ドライバーライセンス、エントラントライセンスの手配(最低2ヶ月前)
       11. 事務局への本エントリー書類提出
       12. 先人達等の他チームとの連携
       13. ドライバー講習会受講の手続き
       14. 鈴鹿での宿泊先及びチームオフィスの手配
       15. レース当日のピット要員の選定
       16. 携帯電話、省電力トランシーバーでのピットとドライバー間の連絡手段の手配
       17. ソーラーカーの輸送方法、
       18. メンバーの鈴鹿に行く交通手段の手配
       19. 持って行くものリストの作成
       20. 2日間のスケジュールと人員配置(ドライバーの交代時間も)
       21. レース運びドライバーとの細かい打ち合わせ
       22. お世話になっているチーム及び、周辺のチームへのご挨拶
       23. ブリーフィングへの参加
       24. 車検時の大会事務局への書類提出
       25. 2日間の昼食の手配
       26. レース本戦での連絡と命令系統の確立(トップダウンが望ましい)
       27. 本戦用バッテリーの満充電チェック
       28. レース終了後の搬送手配
       29. 地元に戻っての車体と備品の搬入
       30. 打ち上げの手配
       31. 協賛先、協賛者及びお世話になったチームへのレース報告
       32. 次年度の展開と抱負

    

 エントラントはドライバーと車体責任者と共同でレース運びを吟味する事。
  まず何分何秒で走るか、ご存知の通り鈴鹿は耐久レースである。いや障害物レースである
  車体の限界とドライバーの力量を考え、予定走行タイムを決める、早く走ると電力消費が多く、4時間完走できない
  ゆっくり走ると、電力消費が抑えることが出来るが、周回数が少なく上位入賞は遠いものとなる。
  また、車体限界を超えた走行をするとリタイヤすることになる
  過去に何度も入賞経験のあるチームが鈴鹿の魔物に飲み込まれている
  無理をしない、落ち着いたレース運びと運営が最後に勝利する。

      
      若葉会の場合は1周6分で4時間で40周の計算を立てた、ドライバー交代が約3分、
      ピットに入ってくる加減速時間を差し引き実質550秒で走行すると40周できる計算になる
      実際にはレース初盤は混雑し思うようなタイムでは走ることが出来ない2010年若葉会は
      384時間完走、準優勝だった。上位チームは454時間の計画をしているはず
     ここからも若葉会の課題が見えてくるWAKABAGOは設計上リアタイヤが非常に外しにくく、
     リハーサルで6分かかり、やむを得ず基本タイヤ交換は無しで本戦に突入することになった。
     これは当会の2011年度の修正箇所のひとつでもある、また後方から早いクルマが来ると、
     道を譲ることドライバーは後方確認を怠らず、ウインカーを付け意思表示を行った後
     速やかに、かつ急ハンドルを切らずに右に寄ること。特に昨今、残念ながら後方確認を怠り、
     道を譲らなかったり、急ハンドルによる接触事故が相次いでいる。ドライバーが気づかない場合、
     エントラントはモニター画面を見ながら、ドライバーに的確なアドバイスをする。

     
      エントラントはバッテリーの容量から終盤のレース運びを修正すること
      エンジョイクラスの場合、満充電計算で
      バッテリー 26Ah x 96V(平均電圧)= 2496W
      ソーラーパワー(仮推測値)= 1000Wh 合計3496W
      これで4時間40周計算すると1周当たり87.4Whしか消費できない
      概ね計算通り、上位入賞チームでの平均は90Wh少し切るとの報告を受けている
      実際には若葉会は1100Whほど消費しており、2011年度は更なる転がり抵抗、
      空気抵抗、軽量化、省燃費運転が必要課題となる。
      また、鉛蓄電池の特性上、最終電圧が11V×8本を切ると、急速に速度が落ちる
      おおまかなレース運びでは2時間経過で2200Wh程度残すほうが、
      終盤有利にレースを進めることが出来る

     
     エントラントは、ドライバーをなだめ、沈着冷静な走行を指示しなければならない。
     極端に遅いクルマに前方を遮られても焦ることなく、後方確認後、コース幅の比較的広い
     見通しの良い場所で追い越しをかけることを指示する。
     レース本戦時、ピット登録要員以外が作業していないか監視する
   ピット登録要員以外が車体をさわるようなことがあると、

     最悪の場合オフィシャル側からペナルティを課せられる可能性がある。
     エントラントは構内放送をよく聞き、聞き取れなかった場合は速やかに確認しなければならない。
     過去に聞こえなかったと、オフィシャルにクレームをつけていたチームがあったが
     自己責任でもある。理解できない場合、近くのオフィシャルスタッフまたは
     コントロールセンターに問い合わせすることが必要である。

     エントラントはソーラーカーレース鈴鹿を障害物レースと解釈すること
     レース経験者ならすぐ理解できるが、普通のレースの場合トップと最後尾のタイムが
     30秒変わることは極めて稀である、しかしソーラーカーレースの場合トップクラスは1340秒、
     最後尾は10分とまかり間違えば最後尾が1周する間に正に3周しかねない勢いである
     後方確認のため可能な限り視認性の良いバックミラーを搭載すること。
     またドライバーの技量も問題となる、充分な技術も無いままコースを
     周回するチームも若干見受けられる、くれぐれも事故が起きないレース運営を心がけなければならない

   エントラントは「めげず」「くじけず」「あきらめず」の精神が肝要である
     エントラントのモチベーションが下がると、必ずレース結果に現われる。
     たとえ萎える事があっても、決してメンバーに悟られないようにすること

   ソーラーカーは次世代を切り開く可能性を秘めたクルマである。
   モノ造り日本の名を心に刻み、お互いに知恵と英知を出し合い、
     切磋琢磨しこれからも皆様と共にソーラーカーを盛り上げていく存在になることが肝要である。

     
     若葉会ソーラーカー概要
     名称 WAKABA‐GO 
     全長×全幅×車高4100 ×1450 ×930
     車両重量              115kg
     ボディー(構造材質)    ゼットロン+CFRP  シャーシ(構造材質)アルミニウムパイプ7N材
     タイヤ         DUNLOP  2.25 x 16“
     太陽電池     昭和シェル 単結晶シリコンFT132-E 総出力477.6W
     モーター          ミツバM1096改 
     DCブラシレス・インホィール
     搭載蓄電池 古河電池FPX12240H 8個搭載
    
     戦歴
     2007年 26周23位
     2008年 29周19位
     2009年 28周 4位(雨天)
     2010年 38周 2位

大正工業若葉会

     
     地元経営者の協議会的組織として結成された大正工業会の青年部会
     主に製造関係の経営者が占める,その50周年事業の一環として
    「若葉会ソーラーカープロジェクト」を発足2007年から
     ソーラーカーレース鈴鹿に参戦、大阪中小製造業の意地を見せ着実に順位を伸ばしている。

     
     ○田 英俊 ○田ボールト 代表取締役
     16代若葉会会長、0910年ファーストドライバー

     
     ○○ 修 株式会社 ○○カン代表取締役
     若葉会ソーラーカープロジェクト副部会長、
     車体総責任者、エースドライバー

    
    ○○ 敦史  株式会社 ○○金属代表取締役
    若葉会ソーラーカープロジェクト
    部会長、総監督、エントラント
    0708年ファーストドライバー